一 芭蕉の「旅に病んで夢は枯れ野をかけめぐる」はあまりに有名で今さら評注を加える余地もないであろうが、やはりいくら味わっても味わい尽くせない句であると思う。これは芭蕉の一生涯の総決算でありレジュメである・・・ 寺田寅彦 「思い出草」
・・・しかし、おとぎ話に下手な評注を加えるのはほとんどこれに類した滑稽に堕しうる可能性がある。 これに関連して思うことは今日の普通教育のしかたに共通した一種の器械的な形式主義がありはしないかということである。昔の小学校の先生などとちがってあま・・・ 寺田寅彦 「さるかに合戦と桃太郎」
・・・しかしここでこれらの詳細にわたって紹介し評注を加えることはできない。私はもし機会があったら、他日特に「ルクレチウスの地球物理学的所説」だけを取り出してどこかで紹介したいという希望をもっているだけである。 彼が雷電や地震噴火を詳説した目的・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
出典:青空文庫