・・・その詳細の数字は略するが、冬期すなわち十二月一月二月の三か月中における総降水日数を、最近四か年について平均したものをあげてみると、次のようである。伊吹山 六九、二 岐阜 四十、二敦賀 七二、八 京都 ・・・ 寺田寅彦 「伊吹山の句について」
・・・しかしS先生が意識して嘘をわざわざ書かれるはずはないので、詳細の点に関する記憶の誤りや思い違いはあるにしても大体の事実に相違はないであろうと思われた。それで、これは夏目先生に関する一つの資料として保存しておけば他日きっと役に立つ機会があるで・・・ 寺田寅彦 「埋もれた漱石伝記資料」
・・・ 大蛇と鰐との闘争も珍しい見ものであるが、なにぶんにも水の飛沫がはげしくて一度見せられたくらいでは詳細な闘争方法が識別できにくいのが残念である。 これに反して虎と大蛇との取り組みは実にあざやかである。蛇の闘法は人間にはちょっとまねが・・・ 寺田寅彦 「映画「マルガ」に現われた動物の闘争」
・・・しかし、そのような場合でも詳細に調べてみると、やはり海陸風に相応する風の弛張が認められない事はないのである。 夕なぎというのは昼間の海風から夜間の陸風に移り変わる中間に、一時無風の状態を経過する、その時をさして言うのである。従って夕なぎ・・・ 寺田寅彦 「海陸風と夕なぎ」
・・・ 作者の頭の中にある腹案のようなものは、いかに詳細に組み立てられたつもりでも、それは文学ではない。またそれを口で話して一定の聴衆が聞くだけでもそれは文学ではない。象形文字であろうが、速記記号であろうが、ともかくも読める記号文字で、粘土板・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・そうしてすべての人達が屋外へ飛び出してしまった後に一人残って飲み残りの紅茶をなめながら振動の経過を出来るだけ詳細に観察しようと努力していた。あとでこの事を友人に話したら腰が抜けて逃げられなくなったんじゃないかといって笑われたくらいであった。・・・ 寺田寅彦 「家庭の人へ」
・・・御互になるほどと合点が参るためには、今少し詳細に「情を理想とする」とは、こんなものだと小かく割って御話しをしなければなるまいと思います。 情を働かす人は物の関係を味わうんだと申しました。物の関係を味わう人は、物の関係を明めなくてはならず・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・一も早く夫に別れて、多勢の子供を始め家事万端を婦人の一手に引受くるが如き不幸もあらんには、其時に至り亡人の存命中、戸外に何事を経営して何人に如何なる関係あるや、金銭上の貸借は如何、その約束は如何など、詳細の事実を知らずして、仮令い帳簿を見て・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・『人民の文学』は、ひろく読まれているのに、詳細な書評が少ないのは、この複雑性によるとも考えられる。 宮本顕治の文芸評論をながめわたすと、いくつかの点に心をひかれる。その一つは、著者が若々しい第一作「敗北の文学」及び「過渡期の道標」で示し・・・ 宮本百合子 「巖の花」
・・・ この間の消息を詳細に眺めると、やはりそこには無量の感慨を誘うものが横わっている。作業場の設置者、技術指導者は、きわめて公平といえばいえる率直さで娘たちが立派に男の熟練工なみどころか、外国の技術者の五倍もの能力をもっていることを承認して・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
出典:青空文庫