・・・ そこで、一時、真鍮の煙管を金と偽って、斉広を欺いた三人の忠臣は、評議の末再び、住吉屋七兵衛に命じて、金無垢の煙管を調製させた。前に河内山にとられたのと寸分もちがわない、剣梅鉢の紋ぢらしの煙管である。――斉広はこの煙管を持って内心、坊主・・・ 芥川竜之介 「煙管」
・・・それをわざわざ調製したのだそうである。小山書店主人のなみなみならぬ熱心な努力が、これらの装幀にも現われているようである。この異彩ある珍書は著者、解説者、装幀意匠者、製紙工、染織工、印刷工、製本工の共同制作によってできあがった一つの総合芸術品・・・ 寺田寅彦 「小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」」
・・・とにかくその七月いっぱいに私のした仕事は、一、北極熊剥製方をテラキ標本製作所に照会の件一、ヤークシャ山頂火山弾運搬費用見積の件一、植物標本褪色調査の件一、新番号札二千三百枚調製の件 などでした。 そして八月に・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・噂では、けがらわしいリスト調製に無関係ではないと話される作家さえもあった。 アメリカへの戦争準備を強行中の軍事力は専断のかぎりをつくした。情報局でこしらえたジャーナリストと役人との、執筆者リストのようなものを、そのころ偶然みたことがあっ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・手紙は、アメリカの技術家からラジウム調製の方法を教えて呉れるようにと云って来ているものです。この手紙の内容は、誰にでもすぐ考えられるとおり、キュリー夫妻が世間の人たちが誰でもやっているとおり自分の発見に特許をとって、ラジウム応用のあらゆる事・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・一リットル二十三哥ぐらいで、赤坊の体に必要な処方で調製された牛乳が貰えるのだ。「クララ・ツェトキンの名による産院」には、こういう設備で百五十人分の寝台がある。「われわれのところはなかなか繁昌ですよ。一日に十五人から十八人ぐらい産婦さ・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
出典:青空文庫