・・・漫才をみて笑う民衆の朗らかさ、その素朴な生活力こそ文学に新しい力として齎されなければならないという論旨が展開された。 民衆の文学という声が、文学の世界の現実として民衆の日常生活、心理、歴史への関り方を再現してゆくべきであるという自然な解・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・彼女によれば、神は全知全能であるから、唯一つであるその神と同じものをいくつも創れない、ために神は常に完全でないものをこの世に造らなければならないというのが、論旨であった。この本をナイチンゲールから寄贈されたジョン・ステュアート・ミルが、この・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・招来されつつあることは、朝鮮・満州などの文学的動勢に対する中央の文壇の関心を見ても、九州文学、関西文学などの活溌さを見ても、将来の文学に多極性と豊富さをもたらすものとして、大いに見らるべきであるという論旨は、同感であると思う。特に素材主義の・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」
・・・文壇は作家も文学をもちぢこませてしまう、広々とした、流動する民心とともにある文学を創るために文壇は既に害あって益ないところであるというのがこの主張の論旨である。 日本に文壇というものが皆にわかる一定のまとまった形で出来たのは、自然主義文・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・しかしいかなる雄弁家も一の論題に就いてしゃべり得る論旨には限がある。垣の上の女もとうとう思想が涸渇した。察するに、彼は思想の涸渇を感ずると共に失望の念を作すことを禁じ得なかったであろう。彼は経験上こんな雄弁を弄する度に、誰か相手になってくれ・・・ 森鴎外 「鶏」
出典:青空文庫