・・・そして自分は比較する気もなく、不体裁なる洋服を着た貴族院議員が日比谷の議場に集合する光景に思い至らねばならぬ。 これにつけてもわれわれはかのアングロサキソン人種が齎した散文的実利的な文明に基いて、没趣味なる薩長人の経営した明治の新時代に・・・ 永井荷風 「霊廟」
・・・ だいたい今まで中学が少な過ぎたために、県で立てたのが二つ、その当時、衆議院議員選挙の猛烈な競争があったが、一人の立候補が、石炭色の巨万の金を投じて、ほとんどありとあらゆる村に中学を寄付したその数が五つ。 こんなわけで、今まで七人も・・・ 葉山嘉樹 「死屍を食う男」
・・・改革の後も役夫・職人の輩はただちに国事にかかわることなく、議員の種族はいぜんたる旧の議員にして、ただこの改革ありしがために、早くすでに議員に戒心を抱かしめ、期せずしておのずから下等の人民を利したりという。 ゆえに政府たる者が人民の権を認・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・県の議員の。」「ええ。」「あいつは悪いやつだぜ。あいつのうちがこっちの方にあるのかい。」「ああ、ぼくの旦那のうちから見え……。」「おい、こら、何をぐずぐずしてるんだ。」うしろで大きな声がしました。見ると一人の赤い帽子をかぶっ・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・ 青年団の寄合で、村会議員の清助に会った時、彼はざっくばらんに自分の意見を話した。「どんなもんだべ、俺、まだ足腰の立つうち柳田村さやるのがいいと思うが、あっちにゃ何でも姪とかが一戸構えてる話でねえか。――万一の時、俺一人で世話はやき・・・ 宮本百合子 「秋の反射」
・・・下院でタフト・ハートレー法に賛成した七十名の議員が落選し、上院で八名ほどの議員がおなじ理由で落選したことが、NHKの放送でも語られた。 アメリカ本国の人口比率では婦人が四十六万人少い。労働人口の二八パーセントを婦人が占めて、五百種類以上・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・こういうことを考えついたり、貴族院議員をやめたり、兄が兄がと亢奮して気の毒である。〔一九三七年七月〕 宮本百合子 「雨の小やみ」
・・・高野岩三郎氏が死去されたのちNHKの会長となった古垣鉄郎氏は、英語もフランス語も達者であろうし、行儀がいいことが必要な時と場合の分別もあり、貴族院議員だったし、文化人であろうけれども、NHKは、新会長によって会長流民主化におかれざるを得ない・・・ 宮本百合子 「「委員会」のうつりかわり」
・・・その政党の議員の或るものはタフト・ハートレー法を通過させ、黒人に市民権を与えることについて反対しつつあるその民主党選出の大統領となるためには、トルーマンもウォーレスが正当に主張した、人民の意志を代表する民主的綱領にいくらか近づかなければなら・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・それでもとうとう巴里で議員に挙げられるまで漕ぎ付けた。大した学者ではない。スチルネルと同じように、Hegel を本尊にしてはいるが、ヘエゲルの本を本当に読んだのではないと、後で自分で白状している。スチルネルが鋭い論理で、独創の議論をしたのと・・・ 森鴎外 「食堂」
出典:青空文庫