・・・日本の作家では夏目先生のものは別として国木田独歩、谷崎潤一郎、芥川竜之介、宇野浩二、その他数氏の作品の中の若干のもの、外国のものではトルストイ、ドストエフスキーのあるもの、チェホフの短編、近ごろ見たものでは、アーノルド・ベンネットやオルダス・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
去年の秋、谷崎君がわたくしの小説について長文の批評を雑誌『改造』に載せられた時、わたくしはこれに答える文をかきかけたのであるが、勢自作の苦心談をれいれいしく書立てるようになるので、何となく気恥かしい心持がして止してしまった・・・ 永井荷風 「正宗谷崎両氏の批評に答う」
・・・ 当時、日本の文学は、白樺派の人道主義文学の動きがあり、他方に、自然主義が衰退したあとの反射としておこった新ロマンティシズムの文学があった。谷崎潤一郎の「刺青」などを先頭として。同時に『新思潮』という文学雑誌を中心に芥川龍之介が「鼻」「・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第一巻)」
・・・日本資本主義高揚期であった明治末及び大正時代に活動しはじめた永井荷風、志賀直哉、芥川龍之介、菊池寛、谷崎潤一郎その他の作家たちは、丁度それぞれの段階での活動期を終ったときだった。これらの作家たちは無産階級運動とその芸術運動の擡頭しはじめた日・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
六月某日。 芸術院に谷崎潤一郎が入るようになったとか、ことわったとかいう記事が出ている。それを読むと、谷崎潤一郎がつむじを曲げているのは、芸術院そのものの性質が気にそまなくて冠を曲げているのではなく、電報一つで交渉され・・・ 宮本百合子 「雨の小やみ」
・・・何故なら、作家野上彌生子の年齢的同時代としては、谷崎潤一郎だの平塚らいてうだの、僅六歳の年長者として永井荷風等があり、それらの人々の生活内容と作品とは、あなたとは全く別様のものです。あなたのように若いジェネレーションの息吹きがその作品の内に・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・丁度谷崎潤一郎の「春琴抄」などが世間の注目をひき、文章の古典復興物語調流行がきざしかけた頃、なにかの雑誌で、谷崎と志賀との文章を対比解剖し、二人の文章にあらわれている名詞、動詞の多少、形容詞、副詞の性質を分析し、志賀直哉を客観的描写の作家と・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・とことんのところまで色も彫りも薄めず描写して行く力は大きいものですね。谷崎は大谷崎であるけれども、文章の美は古典文学=国文に戻るしかないと主張し、佐藤春夫が文章は生活だから生活が変らねば文章の新しい美はないと云っているの面白いと思います。し・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・今日私たちの目の前にある近代古典と云うべき作品の多くはこれらの時期に書かれたものであるし、古典的な権威として今日或る意味で価値ある文学上の存在をつづけている作家たち、例えば島崎藤村、徳田秋声、谷崎潤一郎、永井荷風、志賀直哉、武者小路実篤等は・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・しかしながら、当時にあっては単に文学の教養としての範囲に於て言われていただけであったという事実である。谷崎潤一郎、永井荷風、佐藤春夫等の作家は彼等の古典文学の教養を土台として例えば「盲目物語」「春琴抄」「つゆのあとさき」等の作品を示し、文芸・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
出典:青空文庫