・・・山田君は病気で故郷へ帰った。貴兄の縁談は小生が引継がなければならなくなった。しかるに小生は、君もご存じのとおり、人の世話など出来るがらの男ではない。素寒貧のその日暮しだ。役に立ちやしないんだ。けれども、小生と雖も、貴兄の幸福な結婚を望んでい・・・ 太宰治 「佳日」
・・・「貴兄の短篇集のほうは、年内に、少しでも、校正刷お目にかけることができるだろうと存じます。貴兄の御厚意身に沁みて感佩しています。或いは御厚意裏切ること無いかと案じています。では、取急ぎ要用のみ。前略、後略のまま。大森書房内、高折茂。太宰・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・書き直して貰っても駄目かと思います。貴兄にとってはあれが力作かも知れませんが、当方ではあれでは迷惑ですし、あれで原稿料を要求されても困ると思います。いずれ、貴兄に機会があればお詫びするとして取敢えず原稿を御返却いたします。匆々。『秘中の秘』・・・ 太宰治 「二十世紀旗手」
出典:青空文庫