・・・る島田娘の姿になって、眼ざしさえ風情ありげにうつっているのもまことに感服ものであるが、その左側に文麿公が、髪までをヒットラー風に額へかきおろし、腕に卍の徽章をまいて、ヒットラーになりすまして笑いもせず貴公子らしく写っている姿は、相当なもので・・・ 宮本百合子 「仮装の妙味」
・・・ ツルゲーネフが二十を越したばかりのロシアの富裕な貴公子で、天性優美と不決断とを持った西欧主義者として当時ペテルブルグの華やかな社交界に余暇の多い日々を送っていたればこそ、舞台以外のヴィアルドオ夫人と親しくする機会をもち、彼とは対蹠的で・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・日本に於ける基督教布教史は当時乱世の有様に深く鋭く人生の疑問も抱いた敏感な上流の若い貴公子、女性などの無垢な傾倒と、この浦上の村人のような幼児の魂を持った人々の献身とによって、如何に美しく、如何に悲しくされているかしれないと思う。数多く来た・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
出典:青空文庫