・・・ 以上自分は与えられたスペースで、青年の教養に資する視点から、倫理学研究の手引きのようなものを書いた。書くべき多くのものが残された。中世期の神秘主義の倫理観、古代のストアやエピクロス派の倫理観、スピノーザやショーペンハウエルの形而上学的・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・それには問題のつり橋のどの鋼索のどのへんが第一に切れて、それから、どういう順序で他の部分が破壊したかという事故の物的経過を災害の現場について詳しく調べ、その結果を参考して次の設計の改善に資するのが何よりもいちばんたいせつなことではないかと思・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・ば、塵の都に住んで雑事に忙殺されているような人が僅少な時間をさいて心を無垢な自然の境地に遊ばせる事もできようし、長い月日を病床に呻吟する不幸な人々の神経を有害に刺激する事なしに無聊を慰め精神的の治療に資する事もできはしまいか。こういう種類の・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・ 友人鵜照君の年賀状観の変遷史をここに御紹介して読者の御参考あるいはお笑い草に資するのである。 寺田寅彦 「年賀状」
・・・人類が今日まで夥しい努力と犠牲によって押しすすめて来た文化の蓄積を最も豊富、活溌に人間性の開花に資するようにうけとり活用して、そのような動的形態の中に脈々と燃える人間精神の不撓な前進の美を感得することは、何故これらの批評家にとってこれ程まで・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫