・・・そして、もう赤ちゃんがかれこれ、お乳をほしがる時分だと思っています。」「二人の子供はどんな夢を見ているだろうか? せめて夢になりと、楽しい夢を見せてやりたいものだ。」と、ほかの一つの星がいいました。「いや、姉のほうの子は、お友だちと・・・ 小川未明 「ある夜の星たちの話」
・・・なるたけ、赤ちゃんを眠らせるために、こうして、いつまでも外に立って、唄をうたっているのです。」といいました。 少女は、娘のいうことに、深く同情いたしました。「そんなら、夜中でも起きて、あなたは唄をうたいなさるのですか?」「夜中で・・・ 小川未明 「海からきた使い」
赤ちゃんが、おかあさんの おっぱいを すぱすぱと のんで いました。そばで みて いた つね子ちゃんは、「おいしそうね。」と いいました。「おまえも こう して のんだのですよ。」と、おかあさんが おっしゃいました。つ・・・ 小川未明 「おっぱい」
ちょうど赤ちゃんが、目が見えるようになって、ものを見て笑ったときのように、小さな花が道ばたで咲きました。 花の命は、まことに短いのであります。ひどい雨や、強い風が吹いたなら、いつなんどきでも散ってしまわなければならない運命でありま・・・ 小川未明 「くもと草」
・・・ 荒物屋の前に、若いおばさんが、赤ちゃんを抱いていました。なんと思ったか誠さんは、そのそばへいって、「おばさん、このねこの子を飼ってやってくださいませんか。」と、頼みました。 赤ちゃんは、子ねこを見て、きゃっ、きゃっといって、喜・・・ 小川未明 「僕たちは愛するけれど」
「お母さん、ここはどこ?」 お母さんは、弟の赤ちゃんに、お乳を飲ませて、新聞をごらんになっていましたが、義ちゃんが、そういったので、こちらをお向きになって、絵本をのぞきながら、「さあ、どこでしょう。きれいな町ですね。義ちゃんも大・・・ 小川未明 「僕は兄さんだ」
・・・ お酌のひとは、鳥のように素早く階下に駆け降り、やがて赤ちゃんをおんぶして、二階にあがって来て、「さあ、逃げましょう、早く。それ、危い、しっかり」ほとんど骨がないみたいにぐにゃぐにゃしている大尉を、うしろから抱き上げるようにして歩かせ、・・・ 太宰治 「貨幣」
・・・よその人も、ご自分の赤ちゃんが可愛くて可愛くて、たまらない様子で、お湯にいれる時は、みんなめいめいの赤ちゃんに頬ずりしている。園子のおなかは、ぶんまわしで画いたようにまんまるで、ゴム鞠のように白く柔く、この中に小さい胃だの腸だのが、本当にち・・・ 太宰治 「十二月八日」
・・・淀橋の区役所に勤めていて、ことしは三十四だか五だかになって、赤ちゃんも去年生れたのに、まだ若い者のつもりで、時々お酒を飲みすぎて、しくじりをする事もあるようです。来る度毎に、母から少しずつお金をもらって帰るようです。大学へはいった頃には、小・・・ 太宰治 「千代女」
・・・うちのお嫂さんは、ことしの夏に赤ちゃんを生むのよ。おなかに赤ちゃんがいると、とてもおなかが空くんだって。おなかの赤ちゃんと二人ぶん食べなければいけないのね。お嫂さんは私と違って身だしなみがよくてお上品なので、これまではそれこそ「カナリヤのお・・・ 太宰治 「雪の夜の話」
出典:青空文庫