・・・かつ対談数刻に渉ってもかつて倦色を示した事がなく、如何なる人に対しても少しも城府を設けないで、己れの赤心を他人の腹中に置くというような話しぶりは益々人をして心服せしめずには置かなかった。 二葉亭を何といったら宜かろう。小説家型というもの・・・ 内田魯庵 「二葉亭余談」
・・・一寸の虫にも、五分の赤心がありました。苦笑なさっては、いけません。無邪気に信じている者だけが、のんきであります。私は文学をやめません。私は信じて成功するのです。御安心下さい。 太宰治 「私信」
・・・一寸の虫にも五分の赤心がありました。苦笑なさっては、いけません。無邪気に信じている者だけが、のんきであります。私は文学を、やめません。私は信じて成功するのです。御安心下さい。 このごろ私は、毎朝かならず鬚を剃る。歯も綺麗に磨く。足の爪も・・・ 太宰治 「新郎」
・・・男もこれほど女の赤心が眼の前へ証拠立てられる以上、普通の軽薄な売女同様の観をなして、女の貞節を今まで疑っていたのを後悔したものと見えて、再びもとの夫婦に立ち帰って、病妻の看護に身を委ねたというのがモーパサンの小説の筋ですが、男の疑も好い加減・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・吹風の目にこそ見えぬ神々は此天地にかむづまります独楽たのしみは戎夷よろこぶ世の中に皇国忘れぬ人を見るときたのしみは鈴屋大人の後に生れその御諭をうくる思ふ時赤心報国国汚す奴あらばと太刀・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
出典:青空文庫