・・・一、私塾中は起居自由にして一物の身を束縛するなく、官途の心雲を脱却して随意に書を読み、一刻も読書に費さざるの時なく、一語も文学にわたらざるの談なし。身心流暢して苦学もまた楽しく、したがって教えしたがって学び、学業の上達すること、世人の望・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・ この際にあたりて、ひとり我が義塾同社の士、固く旧物を守りて志業を変ぜず、その好むところの書を読み、その尊ぶところの道を修め、日夜ここに講究し、起居常時に異なることなし。もって悠然、世と相おりて、遠近内外の新聞の如きもこれを聞くを好まず・・・ 福沢諭吉 「中元祝酒の記」
・・・晩年起居を不自由にする原因となった暴飲がこの間に始ったそうである。もともと政恒は薄茶がすきで、もんぺいの膝を折っては一日に何度か妻に薄茶をたてさせた。すると、或るとき曾祖母が、一服終った政恒に向って、お前は本当に開墾事業をなしとげる覚悟か、・・・ 宮本百合子 「明治のランプ」
・・・苛々したような起居振舞をする。それにいつものような発揚の状態になって、饒舌をすることは絶えて無い。寧沈黙勝だと云っても好い。只興奮しているために、瑣細な事にも腹を立てる。又何事もないと、わざわざ人を挑んで詞尻を取って、怒の動機を作る。さて怒・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
出典:青空文庫