・・・ただそんなことでも考えなければちょっと他に説明の可能性が考えられないではないかと思われる、それほどにこの嫌忌の起原が自分には神秘的に思われるのである。 蛙をきらいこわがる人はかなりたくさんある。それから蜘蛛や蟹をきらう人も知人のうちにあ・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ワイナハトの起原などから話しましたが、子供の咳は絶え間なしで騒々しく、咳の出ない子はだいぶ退屈しているようでした。きょう子供の贈物にする人形の着物をほとんど一手で縫うたシュエスター何某が、病気で欠席されたのは遺憾でありますというような挨拶も・・・ 寺田寅彦 「先生への通信」
・・・ところがその説明が現在の科学の与えている海水塩分起原説とある度までよく一致しているから面白い。 また河水が流れ込んでも海が溢れない訳を説明する華厳経の文句がある。大海有四熾燃光明大宝。其性極熱。常能飲縮。百川所流無量大水。故大海無有増減・・・ 寺田寅彦 「断片(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・『徒然草』から受けた影響の一つと思わるるものに自分の俳諧に対する興味と理解の起原があるように思う。この本のところどころに現われる自然界と人間の交渉、例えば第十九段に四季の景物を列記したのでも、それが『枕草子』とどれだけ似ているとか、ちが・・・ 寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
・・・風雅という文字の文献的起原は何であろうとも、日本古来のいわゆる風雅の精神の根本的要素は、心の拘束されない自由な状態であると思われる。思無邪であり、浩然の気であり、涅槃であり天国である。忙中に閑ある余裕の態度であり、死生の境に立って認識をあや・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
一 俳句の成立と必然性 五七五の定型と、季題および切れ字の插入という制約によって規定された従来普通の意味での俳句あるいは発句のいわゆる歴史的の起原沿革については、たぶんそういう方面に詳しい専門家が別項で述べ・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・即ち居家の道徳なれども、人間生々の約束は一家族に止まらず、子々孫々次第に繁殖すれば、その起源は一対の夫婦に出るといえども、幾百千年を経るの間には遂に一国一社会を成すに至るべし。既に社会を成すときは、朋友の関係あり、老少の関係あり、また社会の・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・天の人を生ずるや男女同数にして、この人類は元一対の夫婦より繁殖したるものなれば、生々の起原に訴うるも、今の人口の割合に問うも、多妻多男は許すべからず。然らば人事の要用、臨時の便利において如何というに、人間世界の歳月を短きものとし、人生を一代・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・ 三通りの発展の段階があるにしても、唯一つ、最も基本的で共通な点は、民主社会においては、婦人が、全く人口の半分を占める男子の伴侶であって、婦人にかかわるあらゆる問題の起源と解決とは常に、男子女子をひっくるめた人民全体の生活課題として、理・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・ コフマンは、猿と類人猿の話につづく次の章で変った人種の話の項を展開しているが、私たちはこれらの部分では、おのずからダーウィンの「種の起源」と「人及び動物の表情について」という同じ科学者の感興つきない研究へひきつけられる。さらに今日常識・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
出典:青空文庫