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・・・――色と言い、また雪の越路の雪ほどに、世に知られたと申す意味ではないので――これは後言であったのです。……不具だと言うのです。六本指、手の小指が左に二つあると、見て来たような噂をしました。なぜか、――地方は分けて結婚期が早いのに――二十六七・・・
泉鏡花
「雪霊記事」
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・・・しかしその時の事は、大方忘れてしまった中に、一つ覚えているのは、文楽座で、後に摂津大掾になった越路太夫の、お俊伝兵衛を聴いたことだけである。 やがて船が長崎につくと、薄紫地の絽の長い服を着た商人らしい支那人が葉巻を啣えながら小舟に乗って・・・
永井荷風
「十九の秋」