・・・いたかというところから身につけられている種々の精神と肉体との特徴、更にその青年や女性が自分たちの時代として経て来た歴史の性格などがそれとこれとをきりはなして篩にはかけられないような溶け合いかたで刻々に躍動している。 良人となる青年がそれ・・・ 宮本百合子 「家庭創造の情熱」
・・・下岡蓮杖の功績が新しく人々の科学常識の間にとりいれられたのは結構であったし、カメラを愛好する若い人々にとって、ターキーの舞台姿のポーズをとられたのも、鎌倉の波うちぎわで舞う女の躍動をうつせたのも、楽しいことの一つであったにちがいない。 ・・・ 宮本百合子 「カメラの焦点」
・・・それは、民主日本の扉が開かれることになってから、どんなにか従来の進歩的であった人々が溌剌と躍動して、思想の面にも次々に新鮮なおくりものをするかと期待していたところ、その現実には案外に飛躍性が現れてこない、ということである。たとえば、ここに一・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・万葉集の中にうたわれている大らかな明るい、生命の躍動している自然的な自然の描写が、藤原氏隆盛時代の耽美的描写にうつり、足利時代に到って、仏教の浸潤につれ、戦乱つづきの世相不安につれ、次第に自然は厭世的遁世の対象と化した。あわれはかなき人の世・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
・・・り安逸を貪ったことの無い花子の、いささかの脂肪をも貯えていない、薄い皮膚の底に、適度の労働によって好く発育した、緊張力のある筋肉が、額と腮の詰まった、短い顔、あらわに見えている頸、手袋をしない手と腕に躍動しているのが、ロダンには気に入ったの・・・ 森鴎外 「花子」
・・・我々の眼や我々の意欲は、このオーケストラを伴奏としてさらに燃え、さらに躍動しようとする。そうしてこの心は自らを表現しないではやまない。たとえ我々の生命の沸騰が力弱く憐れなものであるにしても、我々はなお投与すべき力の横溢を感ずる。我々は不断に・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」
出典:青空文庫