・・・『回外剰筆』の視力を失った過程を述ぶるにあたっても、多少の感慨を洩らしつつも女々しい繰言を繰り返さないで、かえって意気のますます軒昂たる本来の剛愎が仄見えておる。 全く自ら筆を操る事が出来なくなってからの口授作にも少しも意気消沈した痕が・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・殊に新聞紙の論説の如きは奇想湧くが如く、運筆飛ぶが如く、一気に揮洒し去って多く改竄しなかったに拘らず、字句軒昂して天馬行空の勢いがあった。其一例を示せば、 我日本国の帝室は地球上一種特異の建設物たり。万国の史を閲読するも此の如き建設・・・ 幸徳秋水 「文士としての兆民先生」
・・・北さんはひとり意気軒昂たるものがあった。「あなたは柳生十兵衛のつもりでいなさい。私は大久保彦左衛門の役を買います。お兄さんは、但馬守だ。かならず、うまくいきますよ。但馬守だって何だって、彦左の横車には、かないますまい。」「けれども、」弱・・・ 太宰治 「帰去来」
出典:青空文庫