・・・だから僕は結婚後、僕等の間の愛情が純粋なものでない事を覚った時、一方僕の軽挙を後悔すると同時に、そう云う僕と同棲しなければならない妻も気の毒に感じたのだ。僕は君も知っている通り、元来体も壮健じゃない。その上僕は妻を愛そうと思っていても、妻の・・・ 芥川竜之介 「開化の良人」
・・・ 私の小説の読者に言う、私のこんな軽挙をとがめるな。 二 彼らは言ふのみにて行はぬなり。また重き荷を括りて人の肩にのせ、己は指にて之を動かさんともせず。凡てその所作は人に見られん為にするなり、即ちその経札・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・柳子殿は両人を連れて実家へ帰らるべし一 富継健三の所得金は柳子殿に於て保管あるべし一 柳子殿は時機を見て再婚然るべし 一時の感情に任せ前後の考もなく薙髪などするは愚の極なり忘れてもさる軽挙を為すべからず・・・ 二葉亭四迷 「遺言状・遺族善後策」
出典:青空文庫