近藤君は漫画家として有名であった。今は正道を踏んだ日本画家としても有名である。 が、これは偶然ではない。漫画には落想の滑稽な漫画がある。画そのものの滑稽な漫画がある。或は二者を兼ねた漫画がある。近藤君の漫画の多くは、こ・・・ 芥川竜之介 「近藤浩一路氏」
・・・渠は名を近藤重隆と謂う陸軍の尉官なり。式は別に謂わざるべし、媒妁の妻退き、介添の婦人皆罷出つ。 ただ二人、閨の上に相対し、新婦は屹と身体を固めて、端然として坐したるまま、まおもてに良人の面を瞻りて、打解けたる状毫もなく、はた恥らえる風情・・・ 泉鏡花 「琵琶伝」
・・・これは近藤といって岡本がこの部屋に入って来て後も一言を発しないで、唯だウイスキーと首引をしていた背の高い、一癖あるべき顔構をした男である。「ねエ岡本君!」と言い足した。岡本はただ、黙言て首肯いたばかりであった。「詩人? そうサ、僕は・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・ 近藤浩一路の四五点はおもしろいと思って見た。しかし用紙を一ぺんしわくちゃにして延ばしておいてかいたらしいあの技術にどれだけ眩惑された結果であるかまだよくわからない。ともかくもこの人の絵にはいつもあたまが働いているだけは確かである。頭の・・・ 寺田寅彦 「昭和二年の二科会と美術院」
・・・ 院展もちょっと覗いてみた。 近藤浩一路氏は近年「光」の画を描く事を研究しているように見える。ただそれを研究しているという事が何より先に感ぜられるので、楽しんで見るだけのゆとりが自分には出て来ない。 大観氏の四枚の絵は自分には裾・・・ 寺田寅彦 「二科会その他」
・・・日本文学史全巻を担当される近藤忠義が、篤学、正確な視点をもたれる学者であることは、読者にとっての幸運であるし、同時に今日の文学の諸相のみを扱う私にとって一つの幸な安心である。〔一九三七年十月〕・・・ 宮本百合子 「意味深き今日の日本文学の相貌を」
・・・と言っていたのは、ペンさんが近藤で口をみて発音を聞いたところ「ユバモン」というのでした。オリザビトンの代りにはこれが一番よさそうです。一回一―二錠、一日三回、三百錠十一円。オリザニンは専門家にいわせると、気やすめ程度だそうです。わけて二つの・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・交際馴れた近藤氏はロシア語も自由であるらしく、種々とメヌーをくり返して注文された。羊肉の串焼を高く捧げて、一人の助手がそれを恭々しくぬいては客に供する、実にこと/″\しい。そのうちに、この家独特のロシアの貴族? の一団によるバイオリンやヴオ・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・を書いているし、第四巻では近藤忠義が「日本の古典」を書いている。また同じ第四巻にはいろいろの角度から日本の文学、プロレタリア文学の歴史がとりあげられることになっている。広い意味でいえば、これらの題目はみんな文学と生活の関係を語るものである。・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・は伏見鳥羽の戦いに敗れて落ちめになってからの近藤勇と土方歳三とが、新撰組の残りを中心とする烏合の勢をひきいて甲陽鎮撫隊をつくり、甲州城にのり込もうと進むところを、勝沼で官軍に先手をうたれて包囲された物語である。風雲児的な近藤、土方が戦いを一・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫