・・・と堺氏の言った言葉を僕自身としては返上したくなる。 次に堺氏が「ルソーとレーニン」および「労働者と知識階級」と題した二節の論旨を読むと、正直のところ、僕は自分の申し分が奇矯に過ぎていたのを感ずる。 しかしながら僕はもう一度自分自身の・・・ 有島武郎 「片信」
・・・デ、区名カラ申シマスト、アナタモヤハリ牛門ノ一傑デアラセラルルヨウナ事デ、先ゴロ弟ヲ喪イマシタノデ、イロイロ片附ケモノヲ致シマシタ、即チ財政整理デ、ソノ節『我楽多文庫』ヲ見出シマシタカラ、遅マキナガラ返上ニ及ビマシタノデ、仰セノ通リアノ時分・・・ 内田魯庵 「斎藤緑雨」
・・・「露国の名誉ある貴族たる閣下に、御遺失なされ候物品を返上致す機会を得候は、拙者の最も光栄とする所に有之候。猶将来共。」あとは読んでも見なかった。 おれはホテルを出て、沈鬱して歩いていた。頼みに思った極右党はやはり頼み甲斐のない男であった・・・ 著:ディモフオシップ 訳:森鴎外 「襟」
・・・御臨終の砌、嫡子六丸殿御幼少なれば、大国の領主たらんこと覚束なく思召され、領地御返上なされたき由、上様へ申上げられ候処、泰勝院殿以来の忠勤を思召され、七歳の六丸殿へ本領安堵仰附けられ候。 某は当時退隠相願い、隈本を引払い、当地へ罷越候え・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」
出典:青空文庫