・・・がその一つの原因は、絶間ない刺戟に彼女等の神経が追い立てられて居るのでございます。 うなりを立てて廻転する大都会の車輪の一端に、辛くも止まって居る微細な神経は、過度な刺激で或程度にすりへらされて居ります。 そのすりへらされた神経に与・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・自分たちがまた再び外からの強権によって、死ぬる場所に追い立てられることは欲していない。愛するものを死なせる女たちではあるまいとしている。アジアの敵であり、日本人民の生命を売るものとして行動したいと思ってはいないのである。数百万人の戦争未亡人・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・日本の人民は細長い島の国の上で、全く世界から遮断され、すきなままに追い立てられた。超国家主義の合言葉の下に、世界といえば日本のほかにナチス・ドイツとファシスト・イタリーしか存在しないように。――ラジオの子供の時間が、ドイツとイタリーは日本の・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・ 又、実際一日中追い立て追い立て仕事にいそがしい女中や清子は、この位の公然な遊戯時間でも与えられなければ浮ぶ瀬もないわけである。 キーキー、コケコッコと云うすさまじい声が聞え出すと、家の者は、「いよ、始りですかね。な・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
・・・警官がそれを邪険に追い立てて散らしている。「働く婦人の夕べ」準備委員会はすぐ抗議団として、弁護士布施辰治、司会者等を築地署へ抗議のために送った。高等主任に会い、折から居合わせた警視庁の高等係とも掛け合ったが、彼等は何と卑劣でしょう。自分・・・ 宮本百合子 「日本プロレタリア文化連盟『働く婦人』を守れ!」
・・・ 物を云う家畜のように群をなして追い立てられ、疲れ果てた体と心とを休めるためには、小さい屋根の下の灯と一つの炉ばたしかもたなかったこれ迄の生活は、日本の婦人にとって余りみじめではなかったでしょうか。私たちは、婦人の生活上の力量がこの社会・・・ 宮本百合子 「婦人民主クラブ趣意書」
・・・郡山が膨張して、附近の村々の若いものはそこの工場で働くようになったし、大戦のころ米価暴騰につられて田地を買い込んだ農民たちは忽ちその借金なしに追い立てられることとなり、村の生活へは明け暮ひろい流れで町の息吹きが動きはじめた。 やがて、そ・・・ 宮本百合子 「村の三代」
・・・、現実の人生の姿として、或る親はそのわが子可愛ゆさの心持をあらゆる明暮の心づかいに表現して、親も子ともども互の愛に満喫し得ているのに、一方ではどうして親心としては同じ思いの或る親が、我が子を幼年労働に追い立てなければならないのか、という疑問・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
・・・捏造記事である大本営発表に追い立てられてきょうの破滅が来たことを、日本のすべての人々は知らされました。特権階級として権力を握っているものは、どんなだいそれたことまで平気でしでかすか、ということについて知らされました。こんにち同じ本質の挑発的・・・ 宮本百合子 「わたしたちには選ぶ権利がある」
出典:青空文庫