・・・だがな、そんな問題が起るたびに部署をすてたんじゃ、限りない退却があるばかりだ。俺はそんな敗北主義には賛成しないな」 やがて若い階級的な妻である女は、自分が良人のところへかけ込んだことを自己批判し、終局に「物事が乱れるような結果になるかも・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・ 十月号『プロレタリア文学』に鈴木清がこの問題について「一歩前進か二歩退却か」という論文を書いている。この論文はいうべきことのまわりをまわりつつ、ついにかんじんの環をつかみそこねた論文である。筆者は、繰返し説得している、組織活動と創作活・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・一九一七年から二〇年までの、国内戦の後、ソヴェトはレーニンのいわゆる「勝利のための退却」をして国内産業へ個人資本の流用を許した。有名な新経済政策時代が現われた。そしてこの経済的変化はソヴェト文壇に深い影響を及ぼした。 ・・・ 宮本百合子 「文壇はどうなる」
・・・独身生活を berufsmaessig に遣っている先生の退却した迹で、最後の突撃を加えなけりゃあならないからな。箕村だってそうだ。僕は何故にお稲荷さんが、特に女中をしていたお梅さんを抜擢したかということまで、神慮に立ち入って究めることは敢・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫