・・・それにしても、思い出す度にぞッとするのは、敵の砲弾でもない、光弾の光でもない、速射砲の音でもない、実に、僕の隊附きの軍曹大石という人が、戦線の間を平気で往来した姿や。これが、今でも、幽霊の様に、また神さまの様に、僕の心に見えとるんや。」・・・ 岩野泡鳴 「戦話」
・・・それで敵から砲弾を見舞われて黙っていられないと同様に、侮辱に対して侮辱を贈り返すのである。速射砲や機関銃が必要であると同様に、切手は最も必要な利器である。」いかにもP君の言いそうな事ではあるが、もしやこれがいくぶんでも真実だとしたら、それは・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・ ドーン、バーン、ドドーンー 発破は機関銃のように続いて、又は速射砲のようにチョット間を置いて、鳴り続けた。 やがて、発破は鳴り止んだ。 海抜二千尺、山峡を流るる川は、吹雪の唸りと声を合せて、泡を噛んでいた。 物の音は、・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
・・・ ちらりちらり上眼で聴衆を見ながら一分間息もつかぬ女声の速射砲。農婦と工場労働婦人の結合のため、我々コムソモールは全力をつくすであろう! ひょいと片肱あげて一段高い演壇から降り、舞台の奥へ戻ってしまった。湧きおこるインターナショナル。 ・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
出典:青空文庫