・・・ 社会のある特殊な時代が今日のような形をとって来ると、女の職業的な進出や、生産へ労働力として参加する数や質のひろがりに逆比例して、女らしい躾みだとか慎しさとか従順さとかが、一括した女らしさという表現でいっそう女につよく求められて来ている・・・ 宮本百合子 「新しい船出」
・・・ 若いキネマ製作者たちはカメラをもって、農村へ、炭坑へ、森林の奥へ進出した。 作家、記者は、彼等の手帖が濡れると紫インクで書いたような字になる化学鉛筆とをもって、やっぱり集団農場を中心として新生活のはじめられつつある農村へ、漁場へ、・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・社会的活動への婦人の進出はめざましいし、その必要の意味も、個人的に社会的に加重されてきているのであるけれども、その一つの事実がとりもなおさず婦人としての生活条件を全般的に向上させているかといえば、そうであるという回答は得られまい。女としての・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・ 新社会への出発以来、ソヴェトの生産各部門には多くの婦人が進出した。いろいろな工場に、少数ながら婦人の管理者も現れた。 管理者の仕事は責任の重い部署である。ソヴェトではあらゆる生産が計画的生産であるから、管理者は、工場内の専門技師、・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・ 工場見学隊を組織し、集団農場視察団を組織して、生産の場所に在る大衆の中へ進出したソヴェト・プロレタリア作家たちは発見した。本当に、唯物弁証主義的手法――プロレタリア・リアリズムを獲得するために、芸術は、どこまでも生産の場所になければな・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・そして所謂日本の国際的進出によって、どの位女の生活はましになっているのであろうか。その答えを具体的に得たいと希望する。交換学生としてイタリーへ一人の日本の若い女性が派遣される誇りは、新潟から売られて東京へ出て来る三十人の少女の心が理解するに・・・ 宮本百合子 「暮の街」
・・・直接生計の不安のない夫人たち、家事はほかのひとにまかせることのできるだけゆとりある社会的環境の女の人々がある意味で進出して来ています。これは、今日の文学そのものの問題も一面にふくんではいるが、そういう条件をもった婦人たちの文学の仕事ぶりと、・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・ルーズヴェルト当選予測を示して、調査の正確さで進出したギャラップ博士の世論調査所が、つづく大戦中、半官的な米国世論調査所と発展し、この一九四八年の大統領選挙でデューイとともに敗退した。ギャラップの米国世論研究所は、ダイジェストと全く似た理由・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・ 一九二九年から三〇年へかけてソヴェトの芸術がこのようにして生産の場所へ進出し、それと連帯をもった経験は、プロレタリア芸術史の上に実に画期的影響を与えたのである。 複雑な再建設期の社会主義的前進の意味を理解しない右翼「同伴者」作家群・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ つい一年ばかり前はあのような屈従を強いられていた日本の全女性が、各方面でこのような進出を開始したのは何故でしょうか。これは決して日本の民主化がバラの咲いている道であるからではありません。全く反対に、容赦ない苦しみと矛盾にみちた生活の現・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
出典:青空文庫