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・・・私の健康も確実に回復するほうに向かって行ったが、いかに言ってもそれが遅緩で、もどかしい思いをさせた。どれほどの用心深さで私はおりおりの暗礁を乗り越えようと努めて来たかしれない。この病弱な私が、ともかくも住居を移そうと思い立つまでにこぎつけた・・・
島崎藤村
「嵐」
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・・・すなわち、こういう遅緩なテンポとリズムを使用することによって、ロシアの片田舎のムジークの鈍重で執拗な心持ちがわれわれ観客の心の中にしみじみとしみ込んで来るような気がしないことはない。 葬式の行列もやはりわれわれには多少テンポのゆるやかす・・・
寺田寅彦
「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」