・・・自分というものを社会の現実の中に置いて、自分の発展や衰滅の道行きを理解することが出来なかった。そのために彼女らしい日常生活の横溢が経済的にも行詰って了うと、実際生活に於いて地味にそこから発展の道を見出すことが出来ず、同時に作家としてもその活・・・ 宮本百合子 「問に答えて」
・・・今日という時代の歴史性に結びつけられているそれぞれの人の、固有な傾向や発展の特長また転落の道行きを物語るのである。 人それぞれに、自分の恋愛生活、結婚生活に対する何かの不安、疑問、確信の欠如があるから、何かその間に均衡を見つけ出せるよう・・・ 宮本百合子 「もう少しの親切を」
・・・ 私は母に対する愛情、つまり最も愛する一人の婦人の生涯の道行きを眺める者として、こういう点にも母に対する深い気の毒さと残念とを感じます。母はそういう逆もどりをする他の面に、実に高く値打ちづけらるべき根気よさや、努力性や聰明をもっていたの・・・ 宮本百合子 「わが母をおもう」
出典:青空文庫