・・・組が入れた労働者には、工場法が適用されない。そのこともあるのであった。 会社のやりくりがうまくゆかないときには組が賃銀を立てかえる。急な設備がいるとなると、これまた組がやることになる。重り重った借金を会社は株で払うしか方法がなかったので・・・ 宮本百合子 「くちなし」
・・・が、どんなひどい階級的裏切りを示しているか、ダラ幹小説であるかを、細かく批判しないでも一応適用したらしい形である。 大体いって、いわゆる専門外の人の作品批評はナカナカ面白いし、参考にもなる。作品批評をする時、はっきりその人の階級性がわか・・・ 宮本百合子 「こういう月評が欲しい」
・・・ 私には、こういう幸福、不幸の対比がそれを書いた人自身が自分の生き方、闘いの外部的な表れかたの形の判断の上にも適用するのであろうと思い、不安を感じた。 何故なら、新しい歴史的世代がそれぞれの事情の中で、どうしても経て克服してゆかなけ・・・ 宮本百合子 「「ゴーリキイ伝」の遅延について」
・・・ 姙娠五ヵ月以上、十ヵ月未満の赤坊のある婦人は決して解雇しないという労働法を、会社は適用するでしょうか? 恋愛が自由でないのはバカにもわかる。愉快な恋愛を健康にするには、この資本主義の社会とは違った経済的基礎、制度、ものの考えかたがいる・・・ 宮本百合子 「ゴルフ・パンツははいていまい」
・・・を小松清氏の訳語に従って適用したものである。 ヨーロッパ大戦後の文学を支配していた心理分析、潜在意識の生活を追究する唯心的な文学は、一九二九年のヨーロッパの大恐慌とその社会事情の変化によって別な人間生活の総体において表現しようと欲する文・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・自分で、物価の統制に関する法律が悪法であると明言しながら、それが法律であるからにはひとにも厳格に適用し、自分もそれで死ぬことをむしろいさぎよしとしたこの判事の悲劇は、「葦折れぬ」の純情がその社会問題のうけとりかたでは文部省版であったことの遺・・・ 宮本百合子 「再版について(『私たちの建設』)」
・・・電波に関するこの中学生的常識は、文学における原作者と翻訳者との関係にも極めて自然に適用される。すなわち、私はこれだけのことを云いたい。私は訳者を識っている。平常着のままでよろこんだり、むずかったり、癇癪を起したり、モスクワへきて、雪で滑った・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・別当には systmatiquement に発展させた、一種の面白い経理法があって、それを万事に適用しているのである。鶏を一しょに飼って、生んだ卵を皆自分で食うのは、唯この systeme を鶏に適用したに過ぎない。 石田はこう思って、・・・ 森鴎外 「鶏」
・・・何ぜならこれは、今迄用い適用されていた感覚が、その触発対象を客観的形式からより主観的形式へと変更させて来たからに他ならない。だが、そこに横たわった変化について、理論的形式をとってより明確な妥当性を与えなければならないとなると、これは少なから・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・ 吾人はこの例を一高校風に適用し得べしと思う。吾人の四綱領は武士道の真髄でありソシアリティの変態であろう。しかれどもこの美名の下に隠れたる「美ならざる」者ははたして存在せざるか。向陵の歴史は栄あるものであろう。しかれどもこの影に潜める悪・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫