・・・は、この作家が戦場で報道部員として置かれた条件を最もよく生かした成果の一つであったと思われる。この記録はあくまで小説ではない記述としての立前で書かれており、一兵士としての見聞と人間火野としての自然の感情とがそれぞれに盛られている。従って、戦・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 親切な眼をもったレーニングラード・ソヴェト文化部員ムイロフは革命のとき鍛冶屋だった。一九一三年からの党員だ。はじめて会った時、ムイロフは、大きい手へ逆にもった鉛筆をけずりながらあんたの職業はなんだと日本女に訊いた。「私は作家だ」「ふー・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ニーナは、職場の壁新聞編輯部員だ。きのうは工場クラブにいのこって今朝みんなに「婦人デー」号をよますようにと、グラフを貼りつけたり、字を書いたり、一生懸命やったのである。 昼休み 賑やかな手風琴の音が工場の広場に・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の三月八日」
・・・戦争の永年、軍隊の指導部員としての生活をして来て、軍規の野蛮さ、絶対命令に対するはかない抵抗としての兵士たちの仮病を見破りつづけて来た人々。死ぬものを「一丁あがり」と看守がいうような牢獄生活をつづけて来た人々。そういう不幸な痕跡をもった人々・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・先達てラジオで読売新聞社の論説部員が、非常にはっきりと分りよく、私達の生活にとって、この戦時利得税と財産税というものが、どういう関係を持っているかということを説明してくれた。それによると戦時利得税は、戦争によって国内に生じた富の偏在を調整す・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫