・・・して世におのずから骨董の好きな人があるので、骨董を売買するいわゆる骨董屋を生じ、骨董の目ききをする人、即ち鑑定家も出来、大は博物館、美術館から、小は古郵便券、マッチの貼紙の蒐集家まで、骨董畠が世界各国都鄙到るところに開かれて存在しているよう・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・ 田舎だけしか知らない人には田舎はわからないし、都会から踏み出した事のない人には都会はわからない。都鄙両方に往来する人は両方を少しずつ知っている。その結果はどちらもわからない前の二者よりも悪いかもしれない。性格が分裂して徹底した没分暁漢・・・ 寺田寅彦 「田園雑感」
・・・然らば即ち今日の女大学は小説に非ず、戯作に非ず、女子教育の宝書として、都鄙の或る部分には今尚お崇拝せらるゝものにてありながら、宝書中に記す所は明かに現行法律に反くもの多し。其の民心に浸潤するの結果は、人を誤って法の罪人たらしむるに至る可し。・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
『学問の独立』緒言 近年、我が日本において、都鄙上下の別なく、学問の流行すること、古来、未だその比を見ず。実に文運降盛の秋と称すべし。然るに、時運の然らしむるところ、人民、字を知るとともに大いに政治の思想を喚・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・また、これを大にして都鄙の道路橋梁、公共の建築等に、時としては実用のほかに外見を飾るものなきにあらず。あるいは近来東京などにて交際のいよいよ盛んにして、遂に豪奢分外の譏りを得るまでに至りしも、幾分か外国人に対して体裁云々の意味を含むことなら・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・ 試に今日女子の教育を視よ、都鄙一般に流行して、その流行の極、しきりに新奇を好み、山村水落に女子英語学校ありて、生徒の数、常に幾十人ありなどいえるは毎度伝聞するところにして、世の愚人はこれをもって教育の隆盛を卜することならんといえども、・・・ 福沢諭吉 「文明教育論」
出典:青空文庫