・・・ 新人が登場した時は、万人は直ちに彼を酷評してはならない。むしろ多少の欠点には眼をつむって、大いにほめてやることが、彼を自信づけ、彼が永年胸にためていたものを、遠慮なく吐き出させることになるのだ。起ち上りぎわに、つづけざまに打たれて・・・ 織田作之助 「文学的饒舌」
・・・都新聞の書評で私のこの書を酷評した人があるが、私はその人たちよりは西鶴を知っている積りである。西鶴とスタンダールが似ていることを最初に言ったのは私であるが、これは他日詳しく論ずる。ただ、ここでは、私の西鶴観は「西鶴はリアリストの眼を持ってい・・・ 織田作之助 「わが文学修業」
・・・その立派な、できた牧師でさえ、一日、馬市に自分の老いた愛馬を売りに行って、馬をいろいろな歩調で歩かせて商人たちに見せているうちに、商人たちから、くそみそに愛馬をけなされ、その数々の酷評に接しては、「私自身も、ついには、このあわれな動物に対し・・・ 太宰治 「春の盗賊」
・・・に於て、五十嵐が牧野を酷評するモメントを、その意識的思想と実際の生活感情の乖離においていることに対して、のべられているのである。 石坂氏の「悪作家より」とこの大森氏の感想文とをあわせ読み、私は、日本における左翼運動が、世界独特な高揚と敗・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
・・・其を説明すると、第一は愛すべき米国女性美の崇拝者であり、第二は、嫌人的な酷評者の一群と成るのでございます。 然し其ならば何故左様な傾向が在るのでございましょう。その最も大きな原因は、今までその紹介に従った観察者が、多く男性であったと申す・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ぎごちなく、醜く、その上、頭も活溌でないと云う酷評が、そう酷評でもない程に、少女時代の私の胸にはうとましく感じられていた。 ところが西洋歴史の時から、私の前に現れた千葉先生は、何処となく、その枯渇した状態とは異ったものを持って居られた。・・・ 宮本百合子 「弟子の心」
出典:青空文庫