・・・今なら重婚であるが、その頃は門並が殆んど一夫多妻で、妻妾一つ家に顔を列べてるのが一向珍らしくなかったのだから、女房を二人持っても格別不思議とも思われなかった。そういう時勢であったから椿岳は二軒懸持の旦那で頤を撫でていたが、淡島屋の妻たるおく・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・ 扨女大学の離縁法は右に記したる七去にして、民法親族編第八百十二条に、夫婦の一方は左の場合に限り離婚の訴を提起することを得と記して、一 配偶者カ重婚ヲ為シタルトキ二 妻カ姦通ヲ為シタルトキ三 夫カ姦淫罪ニ因リテ刑ニ処セラレタ・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・この platonisme が夢の美しいところで、それが無かったら、そう云う女は重婚をいたしているような心持がいたすでしょう。 これだけの説明をいたすのが、わたくしには一通りの骨折ではございませんでした。しかし聡明な、敏捷な思索家でいら・・・ 著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外 「田舎」
出典:青空文庫