・・・兄の家では、大阪から見舞いに来ていた、××会社の重役である嫂の弟が、これも昨日山からおりて、今日帰るはずで立つ支度をしていた。「ここもなかなか暑いね」道太は手廻りの小物のはいっているバスケットを辰之助にもってもらい、自分は革の袋を提げて・・・ 徳田秋声 「挿話」
・・・すると重役会で、ある重役がそれをあのまま醸造所にしようということを発議しました。そこでわたくしどもも賛成して試験的にごくわずか造って見たのですが、それを税務署へ届け出なかったのです。ところがそれをだしにして、わたくしのある部下のものがわたく・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・ブルジョア・地主の工場のように、社長、重役とか主任とか監督とか、威張って搾るばかりが仕事の者は、ソヴェト同盟の工場のどこの隅をさがしてもいない。もう一つのコムソモール・ヤチェイカというのは、共産青年同盟細胞という意味である。 私は二つめ・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・ 自由 進歩 社会 協同 共産 諸派 無所属社長重役 五七名 二九名 六名 三名 ― 一三名 一〇名弁護士 一七名 九名 一九名 ― ― 一名 三名会社員 三名 三名 ・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・結婚の話が要件で、あちらで知った日本の娘さんで声楽を勉強している人、カネボウの重役とかの娘で、小さい写真が入っていますが、ちっ共悪くパッとしたとこのない、やっぱりどてらの苦労もしそうな人で、皆いい点をつけました。娘さんの方では、何かの便利で・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ そういう社会をお互に一日も早くつくりたいと、私もペンを武器とし仲間とともに働いているわけですが、K子の例でもわかるとおり、そういう自分が××株式会社の重役とかその弟とか、従弟とかというもの=柳瀬正夢の漫画の人物、所謂アミーになろうとは・・・ 宮本百合子 「ゴルフ・パンツははいていまい」
・・・かかる知識人の知識人である所以は、単に技術だけを一定の時間売っている機械ではなくて、重役になる希望はない一サラリーマンとして、かかる現実に即しつつ、そこで何を生甲斐として見出し、自分もまがうかたなき人間の一人であるという尊厳をとり戻して行け・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・等しくレビューの男役をする女優、例えば水ノ江タキ子その他に若い女学生が夢中になって、その真似をして髪を切るとか、何か贈り物をしたいために、三十円で私を買って下さいという手紙を或る会社の重役に送ったとかいうことについて、非難の言葉を表現してお・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・発案者の宇原重役の最初の考えでは、国策に沿うと同時に社員に安心して精励して貰うための、「会社の利益から打算しても、相当の予算を組んでやって決して損とならない一石二鳥の仕事である」と思われたのであった。然し、現実は複雑で、事に当って見ると、先・・・ 宮本百合子 「働く婦人」
・・・アサヒグラフか何かに、この女株式会社の女重役連の顔合わせの宴会の写真がのっていた。私はその写真を見て、立派な裾模様の上にのっている白粉の濃い女の顔の表情に、衣裳によって引立てられるほどの美も漂っていないのに或る感想を刺戟されたのであった。・・・ 宮本百合子 「花のたより」
出典:青空文庫