・・・が、いよいよ帰るとなっても、野次馬は容易に退くもんじゃない。お蓮もまたどうかすると、弥勒寺橋の方へ引っ返そうとする。それを宥めたり賺したりしながら、松井町の家へつれて来た時には、さすがに牧野も外套の下が、すっかり汗になっていたそうだ。……」・・・ 芥川竜之介 「奇怪な再会」
・・・偶々チョッカイを出しても火傷をするだけで、動やともすると野次馬扱いされて突飛ばされたりドヤされたりしている。これでは二葉亭が一世一代の芝居を打とうとしても出る幕がないだろう。 だが、実をいうと二葉亭は舞台監督が出来ても舞台で踊る柄ではな・・・ 内田魯庵 「二葉亭追録」
・・・製作の経験も何もない野次馬たちが、どうもあの作家には飛躍が無い、十年一日の如しだね、なんて生意気な事を言っていますが、その十年一日が、どれだけの修業に依って持ち堪えられているものかまるでご存じがないのです。権威ある批評をしようと思ったら、ま・・・ 太宰治 「炎天汗談」
出典:青空文庫