・・・昔々モスクワ大公が金糸の刺繍でガワガワな袍の裾を引きずりながら、髯の長い人民を指揮してこしらえた中世紀的様式の城壁ある市だ。現代СССРの勤労者が生産に従事し新しい生活様式をつくりつつある工場、クラブと、住んで、そこで石油コンロを燃している・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・ 目に余る贅沢 金銀の使用がとめられている時代なのにデパートの特別売場の飾窓には、金糸や銀糸をぎっしり織込んだ反物が出ていて、その最新流行品は高価だが、或る種の女のひとはその金めだろうけれどいかつい新品を身につ・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・ 天鵝絨のように生えた青草の上に、蛋白石の台を置いて、腰をかけた、一人の乙女を囲んで、薔薇や鬱金香の花が楽しそうにもたれ合い、小ざかしげな鹿や、鳩や金糸雀が、静かに待っています。 そして、台の左右には、まるで掌に乗れそうな体のお爺さ・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
出典:青空文庫