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・・・郷里から函館へ、函館から札幌へ、札幌から小樽へ、小樽から釧路へ――私はそういう風に食を需めて流れ歩いた。いつしか詩と私とは他人同志のようになっていた。たまたま以前私の書いた詩を読んだという人に逢って昔の話をされると、かつていっしょに放蕩をし・・・
石川啄木
「弓町より」
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・・・その一つの皺の底を線が縫って、こっちに向ってだんだん上ってきている。釧路の方へ続いている鉄道だった。十勝川も見える。子供が玩具にしたあとの針金のようだった、がところどころだけまぶゆくギラギラと光っていた。――「真夏」の「真昼」だった。遠慮の・・・
小林多喜二
「人を殺す犬」