・・・である。当時は、新しく登場した作家として「沃土」を書いた和田伝、「鶯」を発表した伊藤永之介等の作家があり、「あらがね」で鉱山の生活を描こうとした間宮茂輔等があった。農村を題材として和田、伊藤の作家が活動し始めたには、前年からの社会的題材への・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 鉱山に働く婦人の数が、男子一五パーセント増に対して女子は一七パーセント増して約二百万人もおり、しかも坑内作業が多くて二十歳未満の女の子がふえているという事を、人は無関心に聞くであろうか。 全国工場災害率をみると、例年の最高は機械器・・・ 宮本百合子 「女性の現実」
・・・彼は学校をやめて鉱山に入ってしまった。そして労働運動の指導者になった。私にはどうしても息子の考えがわからぬ。いろんな噂が聴える。段々私の地位も危くなるようであった。ところがあの事件で牢へまで入ることになったがあれの態度は公判のときもなかなか・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・アメリカのオクラホマ州の貧農の家に生れ、後コロラドの鉱山町にうつり、非常な貧困と闘って苦学し、遂に急進的なジャーナリストとして活動するに至るまでのアグネスの生活が、大胆に描き出されているのであるが、一人の女によって書かれているこの一冊の本が・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・帝政時代のロシア支配階級はその他多くの弱小民族を圧迫し生活権を奪うことによって豊沃な耕地を、森林を、鉱山と港とを自分の富として加えた。タタール民族ユダヤ民族は、自分らの言葉で書いたり読んだりすることさえ禁じられていた。小学校は強制的にロシア・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・ 発電所の新設工場は、ドネープル河をはじめ所々方々で行われている。 鉱山、油田に於ける労働から、犬をつれて羊を追っている牧童の仕事に至るまで、この二年間にひろがった生産の分野は数えつくされぬ。そこへ、ソヴェト国家は、労働者の能率を増・・・ 宮本百合子 「なぜソヴェト同盟に失業がないか?」
・・・秋田の鉱山に生い立った彼女は、プロレタリア文学運動の時代、婦人作家として一定の成長をとげた技量を、現在の多面な民主的政治的活動のうちに結実させようとしている小説「尾」そのほか多くのルポルタージュ、民主主義文学についての感想などがかかれはじめ・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・勤労所得税は五千円以上になると、賃銀から天引きされる率があんまりひどいから、鉱山に働く人々は、五千円以内に自分の賃銀をとどめて置こうとしているのだそうです。炭坑の封建的な重労働では、賃銀を五千円以上にとるだけ石炭を採掘することは、相当のがん・・・ 宮本百合子 「婦人大会にお集りの皆様へ」
・・・北海道の鉱山に働きながら朝鮮の独立運動のために闘っていた一家を中心としてかかれている物語りである。緊密によくかかれている。そして最後は敗戦後の東京で目撃した朝鮮人の解放のよろこびの姿で終っている。譲原さんが清瀬療養所に入院してから書いたもの・・・ 宮本百合子 「譲原昌子さんについて」
・・・血の日曜日に、冬宮の前で、皇帝の命令によって、射殺された数千の大衆の写真、シベリアの或る鉱山で、ゼネ・ストに参加した労働者七百人が、殺されて倒れている写真、実にヒシヒシと、プロレタリア・農民の過去の革命的努力が見る者の心にせまって来る。・・・ 宮本百合子 「ロシアの過去を物語る革命博物館を観る」
出典:青空文庫