・・・の主人公が病的であった原因は、富裕な階級の未亡人に甘やかされて社会性を鍛えられずに青年となった人間の醜さと悲劇である。作者が恋愛した人との現実で苦しんでいた、人生に対する対手の狐疑な生活経験からたくわえられたものであった。作者が重い比重で自・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・また、過去のすべての文化的蓄積を最も革命的に利用し得るよう自身を鍛え洗われたものとし、世界観の隅々までをプロレタリアに組織するためには、先ず、文化啓蒙活動をとおしてあらゆる機会に勤労大衆と接触しその一員となることこそ、正しい第一歩であること・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ポーラ・ネグリという女優のあたまのよさは生活力でねりあげ鍛えられていて、つよい印象である。このごろ初恋につれて新しい興味をもたれているデイアナ・ダーヴィン、この女優はその歌にほんとうの濃やかな味わいがないとおりに、修業や世俗の悧巧さでおおい・・・ 宮本百合子 「映画女優の知性」
・・・山田清三郎が獄中からよこす歌には何とも云えぬ素直さ、鍛えられた土台の上に安々としている或るユーモアの境地があり、作品に独特なおもむきを与えているではありませんか。 ところで、この『集団行進』をよんでも思うことは、時事問題を芸術として扱う・・・ 宮本百合子 「歌集『集団行進』に寄せて」
・・・ 折角新しい社会関係で労働に従事し、新しい生活で鍛えられつつある若者が、芸術と生産の間にブルジョア文化がもっていたような分裂へ逆転して、既成作家が揚棄しようとしている欠点を自分達の文学修業の出発点としたりするようなことがあれば、それはと・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・「鋼鉄はいかに鍛えられたか」の著者、オストロフスキーをもわざわざ南露に訪ね、自分の生命の最後の一滴をも人類の発展のために注ぎつくそうとしているこの若く熱烈な不具の新人間の高貴な額に、尊敬と愛着との涙をもって接吻した。 特にフランスへ帰ろ・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・老夫婦が金貸しか何かそういう種類の職業で鍛えた頭で割り出し、目下千鶴子にすすめている縁談が、彼女にとって気乗りのしないのは無理なく思えた。然し、その話のみならず、全体として結婚しようか、しまいか、大局に於ての決心がつかない苦しみの方が大きい・・・ 宮本百合子 「沈丁花」
・・・プロレタリアートがヨーロッパ戦争後のひどい階級的重圧と闘いながら次第次第にやき鍛えている一本の、熱い、世界をかこむ線がある。 奥の室を出たところでムイロフが、 ――これ、見たことがありますか? と壁の上を指さした。 ――ああ。知・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ 国内戦時代のたたかいの結果、失明し全身不随となった若いオストロフスキーが、同志と家族にたすけられつつ、その生涯の終りに「鋼鉄はいかに鍛えられたか」という長篇小説をのこした。このことは、ただ彼が成功した一人の素人作家であって、十九世紀ロ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ 作家同盟の成員が種々の層からなりたっているということは、作家同盟という一組織の内部でそれら様々の段階の作家たちが次第にプロレタリア作家として自分たちを強力に鍛え純化してゆくことを、既定の条件としているわけである。作家同盟のなかに、同伴・・・ 宮本百合子 「前進のために」
出典:青空文庫