・・・ * 夏目さんは門下生には大変好かった。また家庭も至極円満のように思う。近頃新聞など色々のことを書くそうだが、そんなことは何かの感違いだと私は思う。尤も病身のために時には気むずかしくなられたのは事実だろう。子供のこと・・・ 内田魯庵 「温情の裕かな夏目さん」
・・・沼南と仕事を侶にした提携者や門下生的関係ある昵近者さえが「復たユックリ来給え」で碌々用談も済まない中に撃退されてブツクサいうのは珍らしくなかった。 尤も沼南は極めて多忙で、地方の有志者などが頻繁に出入していたから、我々閑人にユックリ坐り・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・それで自分のここに書いたこの取り止めもない追憶が、さもさも自分だけで先生を独占していたかのように読者に見えるとすれば、それはおそらく他の多くの門下生の各自の偽らぬ心持ちを代表するものとして了解しゆるしてもらわれるべきだと思う。そういう同門下・・・ 寺田寅彦 「夏目漱石先生の追憶」
・・・其うち松山中の俳句を遣る門下生が集まって来る。僕が学校から帰って見ると、毎日のように多勢来て居る。僕は本を読む事もどうすることも出来ん。尤も当時はあまり本を読む方でも無かったが、兎に角自分の時間というものが無いのだから、止むを得ず俳句を作っ・・・ 夏目漱石 「正岡子規」
・・・ 三、門下生に対する態度 門下生と云うような人物で僕の知て居るのは、森田草平君一人である。師弟の間は情誼が極めて濃厚であると思う。物集氏とかの二女史に対して薄いとかなんとか云うものがあるようだが、その二女史はどんな人か知・・・ 森鴎外 「夏目漱石論」
出典:青空文庫