・・・ 蓄音機がすむと、伊津野氏の開会の辞があった。なんでも、かなり長いものであったが、おきのどくなことには今はすっかり忘れてしまった。そのあとで、また蓄音機が一くさりすむと、貞水の講談「かちかち甚兵衛」がはじまった。にぎやかな笑い顔が、そこ・・・ 芥川竜之介 「水の三日」
・・・実際二科院展の開会日に蒸暑くなかったという記憶のないのは不思議である。大正十二年の開会日は朝ひどい驟雨があって、それが晴れると蒸暑くなって、竹の台の二科会場で十一時五十八分の地震に出遇ったのであった。そうして宅へ帰ったら瓦が二、三枚落ちて壁・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・実際二科院展の開会日に蒸し暑くなかったという記憶のないのは不思議である。大正十二年の開会日は朝ひどい驟雨があって、それが晴れると蒸し暑くなって、竹の台の二科会場で十一時五十八分の地震に出会ったのであった。そうして宅へ帰ったら瓦が二三枚落ちて・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・帝展の開会が間近くなっても病気は一向に捗々しくない。それで今年はとうとう竹の台の秋には御無沙汰をすることにあきらめていた。そこへ『中央美術』の山路氏が訪ねて来られて帝展の批評を書いてみないかという御勧めがあった。御断りをした積りでいるうちに・・・ 寺田寅彦 「帝展を見ざるの記」
東京美術学校文学会の開会式に一場の講演を依頼された余は、朝日新聞社員として、同紙に自説を発表すべしと云う条件で引き受けた上、面倒ながらその速記を会長に依頼した。会長は快よく承諾されて、四五日の後丁寧なる口上を添えて、速・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・決してそっちの方へ栗の皮を投げたりしてはなりません。開会の辞です。」 みんな悦んでパチパチ手を叩きました。そして四郎がかん子にそっと云いました。「紺三郎さんはうまいんだね。」 笛がピーと鳴りました。『お酒をのむべからず』大き・・・ 宮沢賢治 「雪渡り」
・・・文学報国会が大会を陸海軍軍人の演説によって開会し、出席する婦人作家はもんぺい姿を求められたというようなことは日本の文学史の惨憺たる一頁であった。 わたしは四一年一月から一九四五年八月十五日まで、一切の書くものを発表禁止された。その間に四・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・といって立候補しながら議会開会の全期間をつうじてその議場の演壇からもっとも雄弁にうったえることができたのが今日の醜態事件についてであるということは、またブルジョア婦人代議士の悲惨なる境遇をものがたっています。〔一九四八年十二月〕・・・ 宮本百合子 「泉山問題について」
・・・をやった時などは、開会一分で、中止、解散、であった。自分がやっと「今日ここに集っていらっしゃる方を見ても若い方が多い。お婆さんは」と云いかけたら、中止! であった。余興は講演とは別に許可をうけ、どれも皆数度公演ずみのものだのに「公安を害す」・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ と開会を知らせるベルが鳴ったので、ニーナとナターシャはびっくりして互につかまり合い、やがて大笑いしながら、四五百人はいる大広間へ入って行った。〔一九三二年三月〕 宮本百合子 「ソヴェト同盟の三月八日」
出典:青空文庫