・・・二十箇ほどのガス燈が小屋のあちこちにでたらめの間隔をおいて吊され、夜の昆虫どもがそれにひらひらからかっていた。テントの布地が足りなかったのであろう、小屋の天井に十坪ほどのおおきな穴があけっぱなしにされていて、そこから星空が見えるのだ。 ・・・ 太宰治 「逆行」
・・・ 鴨羽の雌雄夫婦はおしどり式にいつも互いに一メートル以内ぐらいの間隔を保って遊弋している。一方ではまた白の母鳥と十羽のひなとが別の一群を形づくって移動している。そうしてこの二群の間には常に若干の「尊敬の間隔」が厳守せられているかのように・・・ 寺田寅彦 「あひると猿」
・・・それでいわゆる立体映画ができると、われわれの二つの目の間隔が急に突拍子もなくひろがったと同様な不自然な異常な効果を生ずることになり、従って映像の真実性が著しく歪曲することになるのではないかと想像される。 ともかくも、現在の映画のスクリー・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・そういうぼやけたものを今度は週期的に一秒の何分の一の間隔をおいて投射し、それを人間の目でながめるのであるから、結果はただ全部が雑然としてごみ箱をひっくら返した上にとろろでも打ちまいたようなものになってしまう。もっともわざと焦点をはずした場合・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・あの間隔をもっとつめるか、それとも、もっと「あわただしさ」を表象するような他のカットのそうにゅうで置換したらあの大切なクライマックスがぐっと引き立って来はしないかと思われる。 両国の花火のモンタージュがある。前にヤニングス主演の「激情の・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・厳密に言えば、時間の連続な流れの中から断続的に規則正しい間隔の断片を拾い上げたものを逆の順序に展開するのであるが、われわれの視覚的効果の上ではまさしく時の逆行となるのである。 時の逆行によって物の順序が逆になり原因と結果が入り代わるとい・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・すなわち、接近して仰向いて見る時には横幅に対して高さの方を大きく見積り過ぎるような傾向があって、そのために二つの高い建物の間隔がつまって見えるのではないかということである。これに反して遠方から見る場合にはもはやふり仰いで見る心持はなくなって・・・ 寺田寅彦 「観点と距離」
・・・と感ずるかは畢竟人間本位の判断であって、人間が判断しやすい程度の時間間隔だというだけのことである。この判断はやはり比較によるほかはないので、何かしら自分に最も手近な時間の見本あるいは尺度が自然に採用されるようになるであろう。脈搏や呼吸なども・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・同じくらいの時間間隔を置いて連続的に五回の爆発をやるのがいちばん多いようであった。つづけて五回音がして空中へ五つの煙の団塊が団子のように並ぶだけと云わばそれまでのものである。「音さえすりゃあ、いいんだね」「音さえすりゃあ、いいんだよ」、・・・ 寺田寅彦 「雑記(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・種子が間隔を正しくまっすぐになった時はうれしかった。いまに芽を出せばその通り青く見えるんだ。学校の田のなかにはきっとひばりの巣が三つ四つある。実習している間になんべんも降りたのだ。けれども飛びあがるところはつい見なかった。ひばりは降りるとき・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
出典:青空文庫