・・・僕は相変らずたたかれて、相変らず何くそと思って書いている。闘志で書いているようなものだ。東京の批評家は僕の作品をけなすか、黙殺することを申し合わしているようだ――と思うのは、僕のひがみだろうが、しかし、僕は酷評に対してはただ作品を以て答える・・・ 織田作之助 「文学的饒舌」
・・・ 六 相つぐ法難 日蓮の闘志はひるまなかった。百日の後彼は再び鎌倉に帰って松葉ヶ谷の道場を再興し、前にもまして烈々とした気魄をもって、小町の辻にあらわれては、幕府の政治を糺弾し、既成教団を折伏した。すでに時代と世相と・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・言下に反撥して来る。闘志満々である。「カフェへ行って酒を呑むことを考えなさい。」失敬なことまで口走る。「カフェなんかへは行かないよ。行きたくても、行けないんだ。四円なんて、僕には、おそろしく痛かったんですよ。」実相をぶちまけるより他は無・・・ 太宰治 「市井喧争」
・・・松平氏は資本家で搾取者であったろうが、彼の闘志と赤色趣味とは今のプロレタリア運動にたずさわる人々と共通なものをもっていた。しかしまたピンヘッドやサンライズを駆逐して国産を宣伝した点では一種のファシストでもあったのである。彼もたしかに時代の新・・・ 寺田寅彦 「銀座アルプス」
・・・ 五 不屈な闘志――ロンドン時代―― 身重なイエニーは肉体と精神との苦痛をこらえてロンドンにたどり着いた。三人の子供を連れて。そして、宝石のようなレンシェンをつれて。愛称をレンシェンとよばれたヘレーネ・デムート・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・社会的な責任の自覚やある意味で仕事の上での闘志も強靭にされてゆくのではないでしょうか。よく世間で、なかなかやるが結局お嬢さん芸でね、奥さん芸でね、という批評を、殿様芸に並べていうのは、ここのところの機微にふれていると思います。 では、お・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・これは一片の乾いた思弁であり、闘志のつよいある種の人間たちだけの道具なのだろうか。すべての学問は、よろこびを求めてやまない人間心情を源として、そこから湧いて出ている。幸福であろうとする意欲は、人類が幸福という言葉の符号も、文字としての記号も・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・に書かれているまでのアグネス・スメドレーは、不屈な闘志と生来の潔白な人間的欲求と共に熱病的な矛盾と自然発生的な手さぐりな、しかし熱烈な生きかたとを展開しているのである。「女一人大地を行く」が書かれてから既に十年近い月日が経った。スメドレ・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・同志貴司は、同志小林の卓抜な闘志、前進性などの根源を同志小林のゆるがぬ党派性の上に認識せず、具体的な革命的実践と切りはなして、「鼻っ柱」のつよさ、「強がり」、「偏狭性」、「馬車馬的な骨おしみ知らず」、「田舎者の律気」などに還元している。そし・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
・・・について見ても実際の生活の場面での問題、島木氏が悲壮な闘士のポーズとして描き出している心理の観照的態度、嗜虐性等は真の意味での健全な闘志の表現としては、少からずいかがわしいものであった。個人的な話の間に何時であったか私は「盲目」の終りの部分・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
出典:青空文庫