・・・何故なら、結婚はしたくないが子供は欲しいという表現は、半面で男性の在来のものの考えようをこばみながら、その半面ではいっそう無防衛に男に対する自分の女としての性をひらいているわけであり、そのことで何か女性の新しい積極さがあるようによそおいなが・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・その頃から、本年八月迄、十四年の間、日本の婦人運動は辛うじて母子保護法を通過させたのみで、炭鉱業者が戦時必需の名目で婦人の坑内深夜業復活を要求したのに対し、何の防衛力ともなり得なかった。婦人の政治参加の問題どころか、戦争に熱中した政府は戦争・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・一度はフィレンツェ市の防衛のためにサン・ミニアトの丘に立ったミケルアンジェロが、亡命者としてローマに止まり、人々をその悲痛さで撃つばかりのピエタを作りながら、九十年の生涯を終る有様は、波瀾に波瀾を重ねるフィレンツェ市の推移とともに見事な浮彫・・・ 宮本百合子 「現代の心をこめて」
・・・けれども、それに対してとられた抵抗と防衛の手段は、故人の官僚としての地位の必然によって、一国鉄従業員の場合とは全く反対にあらわれた。世間を疑惑のうちにのこしたまま、労働組合や共産党への毒素のような悪宣伝をみなぎらしたまま――遺族自身がのぞむ・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・そのための必要な文学行動はとりもなおさずジャーナリズムを支配しようとしているのと本質においてはひとしい巨大資本による挑発とたたかって理性を防衛する行動であるという実質を理解して来ている。生物学者である天皇が細菌戦に特別命令を与えたという事実・・・ 宮本百合子 「五月のことば」
・・・ 階級闘争としての戦争=帝国主義の侵略に対して、社会主義を防衛する戦争においては、軍事司令部だけが働くのではない。党の政治部は、例えば、「チャパーエフ」を読んでもよくわかるように、闘争の重大な理論的指導の任務を帯びる。 ソヴェトのプ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・とか「文明の防衛者達」という字である。スタインベックは、「これらはすべて極めてとるに足らない事を祝う時に使われる馬鹿馬鹿しい讚辞である」と云っている。「スターリングラードが六台の土鋤機を欲しているときに、世界は一個のごまかしの賞牌をその胸に・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・一九四八年の下半期から四九年にかけて、基本的人権の防衛に関する生活実感の高まりと民族の自立のための統一戦線の必要の実感は、一九三三年以後の人民戦線運動のころよりも、深くひろく、肉体的になっている。それは、アジアにおいての日本が、世界人類に対・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・それが、生存する環境の悪条件に左右される自己防衛の牙であることは、著者そのひとが脱出の夜良人に向っていった言葉であきらかにされている。日夜顔をあわせている女同士で自分が八百円に売ってやった衣類の、二百円を天びきに相手にわたして、何も知らない・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・は何であったかを発見し、その自由と建設の防衛のためにあらゆる「偉大な人間情熱」を展開させた世紀の物語なのである。トルストイ、チェホフ、ゴーリキイ、そしてフールマノフ、ファデェーエフと辿られるロシアの社会進展とその文学の流れは、すべての人民が・・・ 宮本百合子 「ゴルバートフ「降伏なき民」」
出典:青空文庫