・・・しかし、其の間に介在する灰色の階級や、主義者は、却って相互の闘争的精神を鈍らせるばかりでなく、真理に向っての前進を阻止する妨害をなすことを知らなければならない。一般に知識階級が、ある時期に際して、憎視され、甚だしき反感を買うのは、これがため・・・ 小川未明 「芸術は革命的精神に醗酵す」
・・・即ち、彼等の親達もしくは主人が、社会から受ける物質上、または精神上の貧困と絶望とは、無邪気な子供等にまで、いたましく反映するのを阻止することはできなかったでしょう。 しかし、厳密にいえば、健全なる家庭生活以外には、家族制度の基礎がありと・・・ 小川未明 「近頃感じたこと」
・・・そのことが、いかに、純情、無垢な彼等の明朗性を損うことか分らないのみならず、真の勇気を阻止し、権力の前に卑屈な人間たらしめることになるのであります。 考うるだに慨歎すべきことです。この種の読物こそ、階級闘争の種子を蒔き、その激化を将来に・・・ 小川未明 「童話を書く時の心」
・・・そうして反キリスト教同盟は「キリスト教は科学の信仰を阻止し、資本主義の手先になって、他国を侵略する」ということが、その宣言の一つである。私は原始キリスト教の精神というものが決して今日の職業化した街頭のキリスト教とは思っていない。本当に原始キ・・・ 小川未明 「反キリスト教運動」
・・・それから、夢が阻止された願望の実現となるように、映画の観客は映画を見ることにより、実際には到底なれない百万長者になり、できない恋をしたり、不可能事をしとげるというようなことも言っている。これもおもしろい見方である。映画の大衆的であるゆえんは・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・いかなる季節でも、風の日々変化するのを分析すると、海陸風に相当する風の弛張がかなり著しく認められるが、実際にいわゆる海陸風として現われるのは、季節風の弱い時季か、あるいは特別な気圧配置のために季節風が阻止された場合である。 それで、各地・・・ 寺田寅彦 「海陸風と夕なぎ」
・・・環境に適しないものの生存が自然に沮止されるのはこのような場合でもやはり天然界におけると同様である。 官庁内の一部に設けられた研究室の中で仕事をしている科学者は最も不自由な環境に置かれている。研究題目は上長官の命令で決まっており、その上に・・・ 寺田寅彦 「学問の自由」
・・・ 現象を記載するだけが科学の仕事だというスローガンがしばしば勘違いに解釈されて、現象の背後に伏在する機構への探究を阻止しようとすることがあるような気がする。しかし、気をつけないと、自働交換台の豆電燈の瞬きを手帳に記録するだけで満足するよ・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・それが仏教の渡来ということもあいまってわが国におけるこれらのゲームの絶滅をかろうじて阻止することができたのかもしれない。 水産生物の種類と数量の豊富なことはおそらく世界の他のいかなる部分にもたいしてひけを取らないであろうと思われる。これ・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・であるが、しかしもしそういう人たちがかりにそういう人たちとは反対にわざわざ難儀で要領を得ない質的研究をしている少数な人たちの仕事を、意識的、ないしは無意識的に discourage しあるいは積極的に阻止するようなことが、たまにならばともか・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
出典:青空文庫