・・・然し実際の社会を見れば、斯う云う法律によっては罰せられない罪人とも云うべきものが、果して阿部豊一人でありましょうか。また年も若く無智な暁子がその様ないきさつに這入った事には、今日の映画会社の経営方法、スターの製作法、給金は少いのに派出にばか・・・ 宮本百合子 「「女の一生」と志賀暁子の場合」
・・・大抵『アラビアのロレンス』『今日の戦争』『北極飛行』『阿部一族』『高瀬舟』等。 お友達への本代のことは心にかけていますが、そちらからのも手をつけずにとってあって、反って厭だということなので、子供さんのものや何かを送ろうと思います。暮まで・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 島木、阿部という作家たちの読まれかたも、初めの頃は何かを人生的な欲求として求めている読者の心理をとらえて、しかも現実の答えとしては背中合せの本質をもつ作品が与えられていたのであったが、現実への作者たちの向きかたは、その作品の世界の・・・ 宮本百合子 「今日の読者の性格」
・・・即ち、横光利一、小林秀雄、河上徹太郎、阿部氏その他日本の新興芸術派の人々が、この年月「高邁なる精神」と日本語に表現して身につけて来た生活と思想との核心的ポーズは、そのまま「行動主義」のニイチェ的なるものとしてあらわされている。更にフェルナン・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・森鴎外の「阿部一族」の悲劇が、殉死のいきさつをめぐっての武士間の生存闘争であることに、二重の悲劇の意味がふくまれるのである。 最近十数年間、日本人は「滅私」という標語で統一しようとされて来た。近代社会の必然として、いくらかは日本にも生れ・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・ 作者が、北のはずれの野地にかこまれた小寒村にさえも、生きている農村の人間のさまざまのタイプを描こうとして、馬喰兼太、阿部、サダのおふくろなどをとらえている意企は明瞭である。 然しながら、それらの個々の人物とその行動とをいきいきと生・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・ これまでとはちがう意味での文学的啓蒙が日本の文化にとってどんなに必要かということは、二年前ともかく知性の作家と称して売れた阿部知二氏の売れゆきは去年でぐっと減って、島木健作氏さえ本年にかけて石川達三氏に売れゆきを隔絶的に凌駕されている・・・ 宮本百合子 「昭和十五年度の文学様相」
・・・同人としては中村武羅夫、岡田三郎、加藤武雄、浅原六朗、龍胆寺雄、楢崎勤、久野豊彦、舟橋聖一、嘉村礒多、井伏鱒二、阿部知二、尾崎士郎、池谷信三郎等の人々であった。中村武羅夫の論文がこの運動をまとめるきっかけとなったことは興味がある。自然主義の・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・さらに指導性について、各自意見の混乱を示している中で、阿部知二は、はっきりファッシズムに興味をもち、人にきいたり一生懸命研究してみるつもりであると断言しているし、フランスから新帰朝の小松清はジイドの文学的節操に感歎しつつ文学における性問題の・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ 阿部知二は南方経験を作品に書きました。「死の花」という作品が『世界』に出ていましたが、作者が目撃したその土地の人の蒙った残酷な運命、やがて非合理に殺されてしまうことを書いています。その作品で作者は、主人公たる自身がそれらの実状を目撃す・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
出典:青空文庫