・・・しかるに実際物体を落す場合に完全な真空で完全に他の力を除外して実験する事はなかなか面倒である。実際重力加速度gを定めるにはこのような直接の方法によらず、却って間接に振子の週期と長さから定め、空気の抵抗の影響は必要に応じて理論から計算した補正・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・辰之助を差し措くことはその間に何か特別の色がつくようで、気に咎めた。辰之助を除外すれば、色気はないにしても、慾気か何かの意味があって、道太を引きつけておくように、道太の姉たちに思われるのが厭であった。それでなくとも辰之助の母である道太の第一・・・ 徳田秋声 「挿話」
・・・走者ある事情のもとに通過の権利を失うを除外という。審判官除外と呼べば走者(または打者は直ちに線外に出でて後方の控所に入らざるべからず。除外三人に及べばその半勝負は終るなり。故に攻者は除外三人に及ばざる内に多く廻了せんとし防者は廻了者を生ぜざ・・・ 正岡子規 「ベースボール」
・・・その旗頭としての日本ロマン派の人々の文章の特徴は、全く美文調、詠歎調であって、今日では保守な傾きの国文研究者でさえ一応はそれを行っている文学作品の背景としての歴史的の時代考察、文学の環境の分析等は除外されていることに注目をひかれる。 明・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・の文学として当然そこにあらわれるプロレタリア文学者、その出身いかんにかかわらずプロレタリアートの歴史的任務の見とおしに立っている前衛的作家及び革命的、進歩的、良心的インテリゲンツィアの文学は、どうして除外されなければならないだろうか。これら・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・ 人格を見抜く力もなく、頭もなく、ちやほやされるままに気位なくあちこちと浮れ廻る娘は、只一人の真友も持ち得ないと同時に、女性に対して無責任、或は破廉恥な挙動をした者は、忽ち、友達仲間から除外されます。 相当な面目を保った異性間には、・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・この霊との交渉においては、夫も他の息子や娘もいっさい除外された。 独占的な霊との結合の感情は、日常生活において母を寛大にするよりも、却って主我的にしたのであった。 一九二九年の春から秋にかけ、父はモスクにいた私をのぞいた一家四人・・・ 宮本百合子 「母」
・・・ けれども、それ等の、長い眼、大きな心から見れば確に例外、悲しむべき除外例とすべき一事件に対して、周囲が、何等かの意味に於て同様の不安に苦しめられている時、批評、噂する態度は、非常に常軌を逸して来る。 先ず、ト胸を打たれて忽ち冷静を・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・働かせはするが、仕事の本流で女は除外されているから、向上の前途も見とおし少い。 それに加えて、今日でもまだ男のひとたちが、相当の生活力をもつ女には男にその二つが是非ほしいように、やっぱり家庭と仕事とがいるのだという自然なねがいを、自然な・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
・・・ 風俗画としての面から今日の文学を見れば、たとえば丹羽文雄氏によって描かれている女の姿も一箇の絵図であろうし、菊池寛氏の家庭、恋愛観も常識というものの動きを除外していえば最もひろい底辺を示しているであろう。 だが、明治の初頭、『女学・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
出典:青空文庫