・・・ ソフィヤ夫人が、巨人レフ・トルストイの思想と行為とを世俗の面へまで陥落させようとした時には常用の武器とされた子供たち。やがて、髭の剃りあとも青く母の側に立って「気狂い親爺」と父を罵り、子の権利を主張した息子たち。それらの息子等の生活態・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・それから鎌倉の方に行くものを誘い、歩いて、トンネルくずれ、海岸橋陥落のため山の方から行く。近くに行くと、釣ぼりの夫婦がぼんやりして居る。つなみに家をさらわれてしまったのだそうだ。倉知の方に行くと門は曲って立ち、家、すっかり、玄関の砂利の方に・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・八月にパリが陥落した。アンドレ・モーロワの『フランス敗れたり』が日本でひろく読まれたのは、これから間もない頃であった。この本は政界裏のぞき的なサロンゴシップで真にフランスの悲劇と人民の反ファシズム闘争を反映したものではなかった。・・・ 宮本百合子 「年譜」
出典:青空文庫