・・・の本質が、更に複雑な隷属の要因を加えて、わたしたちのこんにちの文化問題であることを知る。「今日の文化の諸問題」をふくめて。 一九三一年七月中央公論のためにかかれた「文芸時評」は、全篇がその五月にもたれた「ナップ」第三回大会報告となってい・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・こんなまとまりのない、二重三重の不均衡でがたぴし、民族の隷属がむき出されているありさまが、わたしたち日本人の文化の本質だというのだろうか。 戦時中の反動で、しきりに教養だの文化だのと求めながら、わたしたちは必要なだけの真面目さで今日の文・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・私は、今日女性の心の中には、新たに目覚めた人としての燃えるような意図と共に、過去数百年の長い長い間、総ての生活を受動的、隷属的に営んで、人及び自分の運命に対しては、何等能動的な権威を持ち得なかった時代の無智、無反省、無責任の遺物が潜んでいる・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・朝鮮が隷属からときはなされ、中華人民共和国が確立し、アジアの半植民地、植民地のすべての土地に民族自立の運動がおこっていて、それぞれに成功に進みつつあるとき、自身としては武器をすてている日本人民が、全アジアに対して、小さいけれども強い毒をふく・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ もしもしお嬢さん、大変古風なおこのみですが、あなたの御盛装が意味しているとおり、民法が昔にかえって、婦人の地位を男子に隷属したものに戻すとしたら、どうお思いでしょうか、と。きかれた娘さんは、きっとしごきの房をはげしくゆるがして、そんな・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・を見下げる習慣をもたされてきた一部の人々は、いまは日本も敗けてしまったのだからと、軍国主義権力の崩壊を、それによってこわされた自分たちの生活と同じ一つもののように思いこんで、われから隷属に屈していることはないだろうか。 夫婦の不和や家庭・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・従来のプロレタリア文学は「公式的な階級動向理論に煩わされて、知識階級が自己を無視し、自己を否定し、自己を労働階級に隷属させ、融合させようとしたり」「客観的な批判もなく、自己の正しい検討もなかった」が、新たに行動主義文学によって唱えられている・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・売れるからますます多く作り、安いからますます読んで、自分たちの汗水たらしてとった金を払って自分たちをますます狭い低い隷属的な生活へ追い込む文化の影響を受けて行くという状態にあるのである。 読者は今度国定教科書の插絵が大変かわったことに気・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・ファシスト自身をさえおどろかしたこういう実例ばかりでなく、この頃になっては、民主的ということばは、全く独占資本的または隷属的本質とすりかえられはじめている。 一九四六年においてあれほど重大な課題であった新聞、出版、放送の民主化が、今日、・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・ 当時は風流と云い、あわれにやさしい趣と云って、恋愛も結婚も流れのうつるような形で、婦人は隷属せず行われたようでも現実には矢張り男の好きこのみで愛され、また捨てられ、和泉式部のような恋愛生活の積極的な行動力をもつ女性でも、つまるところは・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
出典:青空文庫