・・・ パンテージ・ショウの娘たちは、レビューへ女が男になって出るなどというのは日本だけだと笑っているとその時も書いてあったが、私は、レビューの男役に若い娘の人気が集るとともに、日本の現代生活の矛盾とデカダンスとがあると思っている。 先達・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・――それがソヴェート式 廊下では 左右の長椅子を中心としてそろそろ歩ける女の患者たちが集る。揃ってお仕着せの薄灰色のガウンをかき合わせ、それだけは病わぬ舌によって空気を震わす盛な声が廊下に充満する。 Yは「ここの廊下、一寸養・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・文学サークルが組合の教・宣部の活動と歩調をそろえていないというあちこちにある現象の一半の理由は、これまでサークルに集る人々の文学的欲求を、ブルジョア文学の伝統的な文学の形態にはめて、考えていた古さ、せまさもあると思える。小説、さもなければル・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・ 一体この村は若い男も女もあんまり土着のものでは居ない処で、中学に村々から集る若い人達ほか居ないだろうとさえ思われるほどだ。 若い娘の居ない村は私にとっていかにも居心地がわるかった。 私は若い力の乏しい村はきらって居るのだ。・・・ 宮本百合子 「旅へ出て」
・・・このことは、文学サークルに集る働く人々の書いたもの、詩や小説にもしばしばあらわれていることは、皆さんが十分知っていらっしゃいます。去年の第三回大会に文学サークル協議会の報告は、詩と小説の面でこの点にふれていました。国鉄の雑誌や労働新聞に集る・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・それが今度めいめいの女としての人生の行手に新しい期待をかけて月一回ずつ集ることになったのであった。 見かけよりはずっと奥ゆきの深い、いかにも桜木町辺の家らしい二階によったその集りには、非常に好感がもたれた。みんな、生活を知り、この社会で・・・ 宮本百合子 「図書館」
・・・彼女はバルザックをカストリィ公爵夫人のサロンに紹介し、そこに集るド・ミュッセやサント・ブウヴなど当時の著名な文学者に近づけるための努力をした。十数年後ハンスカ夫人に宛てた手紙の中でバルザックが当時の優しい回想に溺れながら述べているように、困・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・数人のひとが、又この次日をきめて集るということになった。婦人に関係する綱領がつくられる仕事があった。「長井さん、あなたが引こんでいるってことはないわ、出なさいよ」「ええ。――そうも思うんだけれどもね、……」 かたまって話し合いな・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・そこには植物がなかった。集るものは瓦と黴菌と空壜と、市場の売れ残った品物と労働者と売春婦と鼠とだ。「俺は何事を考えねばならぬのか。」と彼は考えた。 彼は十銭の金が欲しいのだ。それさえあれば、彼は一日何事も考えなくて済むのである。考え・・・ 横光利一 「街の底」
・・・家がまた新しく変ったからであるが、この第二の学校のすぐ横には疏水が流れていて、京都から登って来たり下ったりする舟が集ると、朱色の関門の扉が水を止めたり吐いたりした。このころ、この街にある聯隊の入口をめがけて旗や提灯の列が日夜激しくつめよせた・・・ 横光利一 「洋灯」
出典:青空文庫