・・・畢竟するに馬琴が頻りに『水滸』の聖嘆評を難詰屡々するは『水滸』を借りて自ら弁明するのではあるまいか。 だが、この両管領との合戦記は、馬琴が失明後の口授作にもせよ、『水滸伝』や『三国志』や『戦国策』を襲踏した痕が余りに歴々として『八犬伝』・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・』アグリパイナは、威厳を失わず、きっと起き直って難詰した。応えは無かった。 宣告書は手交せられた。 ちらと眼をくれ、『このような、死罪を言い渡されるような、理由は、ない。そこ退け、下賤の者。』応えは無かった。 理由は、おまえに覚・・・ 太宰治 「古典風」
・・・ いくらか難詰の声で小枝子が云った。そして、「何しろ、現にこういうのがあるんですからね」 自分のメリンス包の下にカヴァをかけてもっている大版の「緋文字」をちらりと見せて小枝子はユーモラスに首をすくめて笑った。「何だか苦しかっ・・・ 宮本百合子 「二人いるとき」
出典:青空文庫