・・・私がかつて朝日新聞の文芸欄を担任していた頃、だれであったか、三宅雪嶺さんの悪口を書いた事がありました。もちろん人身攻撃ではないので、ただ批評に過ぎないのです。しかもそれがたった二三行あったのです。出たのはいつごろでしたか、私は担任者であった・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・ 同じ時、三宅雪嶺という哲学者が博士号をもらってうけた。ことわるほどのものでもなかろう、と笑って受けて、腹が大きいとかほめたものもあった。この雪嶺は、国粋主義者で、中野正剛を婿にした。これもことわるほどの者でもなかろう、というわけだった・・・ 宮本百合子 「行為の価値」
・・・後年花圃の良人三宅雪嶺とその婿である中野正剛等が日本の文化における反動的な一つの元老として存在したことと考え併せると、極めて興味がある。 樋口一葉の小説は、今なお多くの人々に愛せられているし、明治文学を眺め渡した時、婦人作家として彼女く・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫