・・・ カサのない電球が天井から二箇所にぶら下って室内を照している。緊張した空気だ。「職場における文学委員たちの任務は」 直ぐタラソフ・ロディオーノフが、党員らしいきっぱりした口調で坐ったまま始めた。「これまでみたいに、自分一人手・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・ 自分は畳んだ羽織やちり紙を枕がわりに頭の下へかい、踵の方に力をこめて、背筋をのばすように仰向きに寝ながら、それらの街の音をきき、ぼんやり電球を眺めている。 電球はいきなりむき出しに、廊下に向う金網の鉄の外枠から下っているのだが、そ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・彼は、「電球見ないでね」と注意して、二百燭をつけ、それを写真に撮った。卒業製作なのであった。 翌日、まさ子は床についたままで、矢張り殆ど食事が摂れなかった。「こんなに長く恢復しないことは無いのに」自分でも怪しんだ。「・・・ 宮本百合子 「白い蚊帳」
・・・部屋を照す電球が買えないのと等しく、ラジオのための真空管は、普通人には買えないものの一つとなっている。 ラジオは文化の享受面に立つものであるけれども、今日では誰の目にもそれが直接日本の生産技術の低さと繋った不自由に縛られていることが明ら・・・ 宮本百合子 「みのりを豊かに」
・・・何でも題は忘れたけれども、電燈の下で赤ちゃんに添乳していて、急に、この頭の上の電球が破裂して、子供に怪我をさせはしないかと考え出して怯えることを書いた作品は好きで今でも覚えている作である。それで、私は、素木さんが亡くなった時、お葬式にはゆか・・・ 宮本百合子 「昔の思い出」
出典:青空文庫